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秋は夕暮れ。 [diary]

「秋は夕暮れ。夕ひのさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝床へ行くとて、

三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。」


かの清少納言「枕草子」にある通り、秋は夕暮れが素晴らしい。私が何処よりも印象的で美しいと感じたのは、奈良のそれです。


その日は、秋の正倉院展を鑑賞すべく、車で名古屋から奈良国立博物館へ。目的を果たし、いざ帰路に着いたものの道に迷ってしまいました。

当時の車はナビ搭載がなく、大雑把な地図を頼りに、夫は勾配の多い住宅地をああでもないこうでもないと車を走らせていました。ふと、西の空を見やれば、まさに山の端に真っ赤な夕陽が沈まんとしています。間近に見える黒く大きな山のシルエットに夕陽のコントラスト、烏の姿こそありませんでしたが、その美しいことと言ったら… いとあはれなり、とはこういう光景を言うのでしょう。

幸い、這う這うの体で日没寸前に迷路を抜け出し、ようやく高速に乗ることができ安堵。こうして実り多き秋の一日を終えました。


と言うのも、この日博物館内にて、ある女性に遭遇したのでした。夫のかつての同僚です。結婚を機に退職後、名古屋から奈良の学園前へと転居され十余年。見覚えのある子供たちに記憶の糸を手繰り寄せたなら、彼女から届くお年賀状に登場するお子さんたちでした。傍らに彼女の姿を見つけた時の私達の驚きと言ったら…  


秋の奈良、記憶に残る再会と夕陽。偶然と言う名の奇跡のような一日でした。

夕暮れ.jpg


我が家にて。夕焼けを背にした秋の富士山。